「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」を観てきた。長ったらしいタイトルだが原題も “Birdman or The Unexpected Virtue of Ignorance” なのでかなり忠実に踏襲している。観た場所は埼玉県の南古谷という場所にあるUnited Cinemas でゴールデンウィークだというのにガラガラでした。
ハリウッドらしからぬ作品でした。カメラワークも含め実験的な試みもいくつか見られ、成功している部分も多かった。「おもしろかったか?」と問われれば「興味深かった」と答えます。
ワンカットで長く続く(ように見える)シーンが多かった。そして舞台はブロードウェイ。「映画なんて何度失敗しても撮り直しできるんでしょ? 舞台はライブ。失敗したらそれまで。だから舞台俳優のほうが凄い。ブロードウェイは舞台の最高峰。だからハリウッドの役者なんかよりブロドウェイの役者のほうがずっと凄い」というような価値観が現れているようにも思われます。ハリウッドを自己批判しつつ、そういうニューヨークのお高くとまったところも同時にからかっているのかもしれません。
ワンカットシーンへのこだわりがある映画人は多いようで、唐沢寿明主演のイン・ザ・ヒーローにもそんなこだわりが描かれていました。
音楽でも、レッド・ツエッペリンのファーストアルバムがほとんどスタジオライブの一発録りだったことが、伝説のように語られたりします。音楽の場合は動員力のあるライブアーティストじゃないと稼げなくなってしまったので、結果的に純粋なレコーディングアーティストは衰退してしまいました。編集を駆使して作成されたものでも、優良な作品ならばそれで良いので少々残念な傾向です。
音楽といえば、この映画の音楽もかなり独特でした。なにしろBGMの大半はドラムソロでしたからね。結果として、たまに出てくるオーケストラを使用した音楽のインパクトを増すという効果もあったように思います。なかなか斬新で面白かったですが、日本の劇場だとリズムに合わせて体をスィングしながら観るのが憚られるので、海外の劇場で観たかったかもしれません。
出演者は全員上手でしたが、その中でも主人公の娘を演じたエマ・ストーンが特に印象的でした。どこかで見たことがあると思ったら、アメイジング・スパイダーマンのヒロインの子なんですね。彼女はスター性があると思う。
ゴーン・ガールの時にも同じようなことを感じましたが、すでに成功の方程式のようなものが確立しているハリウッドで、敢えて王道から外れて新しい試みをする姿勢は素晴らしいと思う。こういう作品がたまに出ないとマンネリズムが蔓延して、最終的には業界全体が衰退してしまいますからね。