やっと終わった( ´ー`)フゥー...

日英翻訳しか受注しなってもう10年近く経つが、英文和訳の依頼もいまだに来る。請けるつもりは全くないが、業界の動向をチェックするために依頼には一応目を通す。先日もレート8円/wordで依頼がきた。これじゃ1日2000文字やっても16000円にしかならない。この業界に入った駆け出しの頃は、未熟な新人翻訳者でも10円/wordはもらえた。15年前は派遣の翻訳でも時給2000円もらえた。残業なしで一日2000文字こなせる派遣翻訳者は10人に1人もいないので、首都圏に住んで英日のフリーランス翻訳者をするのは馬鹿らしい時代になった。

英日翻訳の原文ドキュメントの質の劣化と、単価の下落に嫌気がさして日英翻訳専門に転向したのが約10年前だが、こちらは最低でも6円/字ぐらいは出た。一日5000文字としても30,000円ぐらいにはなる。しかし、ここ数年は英語と日本語ができる中国人などが参入していて6円以下の仕事の依頼も来るようになった。一時期は安い仕事も請けて稼いでいたが、ある日、自分がずっと8円/字で担当していた製品の仕事が、6円/字で違う翻訳会社から依頼されたことがあって考えを変えた。つまり、まともなレートを翻訳者に払っていたまともな翻訳会社が、激安系の翻訳会社に営業で負けて、両方と付き合いがあった私に同じ仕事が安くなって流れてきたのだ。日英翻訳のマーケットは小さいので、まともな仕事ができる翻訳者の数は少ない。自分が安売りすると市場全体のレートにまで影響してしまう。安くで高品質などというものがあってはいけない。というわけで、その時から7円/字以下の仕事は全部断ることにした。その激安系の翻訳会社とは完全に縁を切った。年収は落ちたが時給は上がった。自分の時間がだいぶ増えた。

今回引き受けた仕事は一週間で40,000字のパワーポイントドキュメントで、TRADOSマッチ率による値引き等もない。単価は15円/字だった。つまり一週間で60万円になる。安い英日翻訳の約二ヶ月分になる。パワーポイントファイルの翻訳というのは面倒臭い。テキストボックスには日英両方の文を入れることが出来ないので、そのまま日本語を英語に置き換えるか、ワード等にコピペして作業することになる。今回は原文にも難解な語句を多用した冗長な言い回しが多くて苦労した。1センテンスで原稿用紙の半分ぐらいを埋めるような文章だ。書いている本人は自分が頭が良いと思っているのかもしれないが、本当に頭が良い人は難解なことを簡潔に伝えることができる人だ。しかし、報酬額が高いので納得して作業できた。

この仕事を無事に終わらせていまこのエントリーを書いているわけだが、先日読んだブログ記事で藤原和博さんがレアカードになれと言っていたのを思い出す。英日の産業翻訳ができる人間は腐るほどいるが、日英ができる人間はずっと少ない。レアなので時給が上がる。

フリーランスも断る能力が大切だと思う。別に一年中働いている必要はない。安い仕事を請ければ平均時給は下がり、業界全体の平均レートも下がり、自分で自分の首を絞める事になる。安い仕事を先に請け負ってしまったため、高い仕事を断らざるをえないこともある。収入が増えると累進課税で支払う税金/保険料も大幅に増えるので、実質的な時給の差は更に大きくなる。

翻訳の仕事が忙しくて朝から晩までずっと英語を書いていると、無性に日本語で何か書きたくなる。というわけでこのチラ裏ブログのエントリーも一気に増えたが、また暫く放置されるかもしれない。こうやって浮いた時間は更にレアなカードに成るために研鑽にあてるのだ。

“Live as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever” – Mahatma Gandhi
「明日死ぬつもりで生きて、永遠に生きるつもりで学べ」マハトマ・ガンディー

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