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何もしなければ40万人死亡という説は大嘘だったのではないか?

『何もしなければ国内で40万人死亡』というセンセーショナルな見出しが踊ったのは4月15日のことだ。この記事を書いているのは5月11日なので、いまこういう記事を書くのははっきり言って後出しジャンケンだ。西浦教授を非難するつもりはない。

この40万人という数字は欧米での数字を参考にして算出したと思われるので、アジアにおける死亡率が著しく低いことがほぼ明らかとなった今、もはや意味はない

当時は「ロックダウンしないと東京ではニューヨーク以上の死者が出る」と海外在住の方々が警告していて、本気でそれを信じた人も多かった。そういう空気があったので仕方がない面もある。

「なぜ中国に近く中国人の来訪もより多いはずの東京のほうがニューヨークよりも数週間遅れるんだ?」という疑問は持っていたし、当時から「BCG予防接種が効いている仮説」等は存在していたので、私自身は半信半疑だった。

とはいえ「最良を望みつつ最悪に備える」のが政治の基本だろうから、ゴールデンウィークまでの非常事態宣言と自粛は当然だろう、という考えだった。特に私が住んでいる山中湖村はゴールデンウィークと夏休みが圧倒的にハイシーズンで、来訪者の数が一桁増えるぐらいだし、同居している家族が小売業で働いていることもあって、私もピリピリとした空気にやられて、かなり警戒するようになった。

しかし、5月に入ってGWも後半に入ったあたりから、「いくらなんでも死者の数が少なすぎる。そもそもこのCOVID-19は本当に言うほど危険なものなのか?」という疑念が強まってきた。それと同時に、ひょっとしたら日本政府が死者数をごまかしているのではないか? という疑問も持った。

しかしながら、5月4日に書かれた「超過死亡数」に関する記事を読んで、日本においては肺炎とインフルエンザを死因とする死者数自体はむしろ減っていることがわかった。政府はCOVID-19の死者数をごまかしていない

ということは政府により発表されている新型コロナウィルスSARS-CoV-2による死者数は概ね正しいということになる。むしろ、「死亡数÷総検査数」が0.1%未満になるシンガポールあたりのほうが数字は怪しいような気もする。

冷静になってくると、検査する人数や基準が一定ではないので、発表される感染者数や陽性率に一喜一憂する意味はあまりないことがわかる。日本を含むアジア地域での死者数が欧米と比べると著しく少ないことを考えると、今いちばん大切な指標は【抗体保有率】ではないだろうか。

抗体を保有しているということはすでに感染したということを意味する。統計学的に有意な数の一般人を無作為に抽出して、抗体保有率を調べれば、最終的に集団免疫を獲得するまでに犠牲になる人数がわかる。本当に40万人が亡くなるのであれば、スウェーデンと同じように集団免疫獲得を目指すという政策は愚策という意見が多いだろう。が、実際の死亡率が欧米と比べて著しく低い可能性が高いのだから、スウェーデンと同じことをしても死亡率は著しく低いはず。日本を含むアジア地域ではこの政策のほうが賢いかもしれない。

たとえば現時点での免疫保有率が10%で最終的な集団免疫のゴールが60%だとすると、最悪の場合でも4000人ていどの犠牲者で集団免疫が獲得できることになる。これはインフルエンザの死亡数と大差がないので、いまの自粛は明らかに馬鹿げた過剰反応だと言える(これは単純な掛け算で算出しました。もしこの考えが根本的に間違っているならば指摘してほしい)。

逆に免疫保有率が1%しかないとしたら、最悪の場合の死者数はその10倍の4万人ていどになるはずなので、より慎重な対処がもとめられるだろう。だが、それにしても40万人死亡という数字には程遠い。NYCでの免疫保有率が20%と言われているので、0.1%というのはどう考えても無さそうだ。

もちろん、ひとりひとりの人生は尊いもので、単なる数字ではない。だが、現実的に少数の老人の命を延命するために日本中の現役世代や子供が犠牲になるというのは異常な話だ。真面目に自粛している老人が大半なのだろうが、遊び歩いたり、店などで怒鳴り散らしている老人を見かけるとそのような思いは一層強くなってしまう。

こう言うと、若者が死亡することもあるという反論があるが、日本ではまだ30歳未満の死亡例がない(5月8日時点)。東洋経済の提供するデータをもとにすれば93%が60歳以上、82%が70歳以上、57%が80歳以上だ

また、自粛を正当化する根拠となっていることの一つに医療崩壊の懸念があげられる。用語だけが独り歩きしている感もあるが、これは要するに「感染症に対応可能な病床数が限られているのに、多数の感染症患者が送り込まれて、病院の感染症科が機能しなくなる」ことを意味し、それ以外の医科については、深刻な院内感染等が発生しない限り医療崩壊しない。

医療従事者が医療崩壊を懸念するのは当然なことで、「どの命を助けてどの命を見捨てる」という決断を押し付けられるのは嫌に決まっている。このため自粛しながら感染の流行を抑制し、感染症に対応可能な病床を増やしていた。私も4月末まではそれが当然だと思っていた。しかし、医療崩壊を懸念するにしても、5月末までの非常事態宣言の延長はいささか大袈裟すぎると思う。

医療従事者の立場で見ればまだまだ病床数は十分ではないのだろう。が、これは結局のところ、延命治療を是として、何が何でも病院に担ぎ込まれた命は全力で助けなければならないという日本の医療ポリシーにそもそもの原因がある

臭いものに蓋をして、日本は現代社会に適合した死生観を確立することができずにきた。後期高齢者の延命治療の是非、終末期医療の重要性、尊厳死や安楽死の是非などについて本格的な議論が行われなかった。

スウェーデンのように自力で食事を取れなくなった人間はICUで治療をしないというスタイルが確立していれば医療崩壊は起きない。80歳以上は重篤化した場合の致死率が88%で、ICUの占有率(死亡+重篤の合計数ベースで算出)が38%だ。つまり、ICUを占有している時間は長いのに、処置してもまず助からない。重篤化した80歳以上の新型コロナウィルス患者はICUを使わない、と決めただけでも病床数に+38%の余裕ができるので、医療崩壊はほぼ起きないはずだ。

5月8日時点での年齢別データ。調査中や非公開もあるので合計数は他のデータと異なる。

これは非情な決断だろうか? 私が80歳以上のCOVID-19患者だったらそれでも構わないだろうと言えるだろうか? 今は言えても実際に80歳になったら言えないかもしれない。それぞれの年齢や家族構成等により考え方は異なるだろう。しかし、老人から順に亡くなっていくほうが自然な社会であることは間違いない。

この決断をするだけで過剰な自粛は必要なくなる。三密回避、手洗い、マスク着用の徹底だけで、後は普通に今まで通りの生活をしても医療崩壊は起きないはずだ。またこのような基本的な感染対策を徹底するだけで、実効再生数(ひとりの感染者が移す人数)は下がるはずだから、集団免疫獲得のゴールも60%以下になるはずだ。

神戸市立医療センター中央市民病院が、外来患者の約3%から新型コロナウイルスに感染したことを示す抗体を確認したと発表したのが5月5日。この時点での日本におけるCOVID-19の総死者数が543名。病院の外来患者なのと神戸という都市部におけるデータだということを勘案して、日本の全体のその時点における感染率が1〜2%程度だとしても、集団免疫の獲得に至るまでの死亡数は15,000人〜30,000人程度だと予測できる。

もちろんWHOが警告しているように、現時点では抗体を獲得しても十分な免疫力が得られる保証はない。が、逆に言えば抗体を獲得してもふたたび感染する可能性が高いということが確認されたわけでもない。ふたたび感染する可能性が高かったら、そのような事例が多数報告されているだろうから、抗体獲得後にふたたび感染する可能性はあったとしてもあまり高くないだろう。

この15,000〜30,000という数字は神戸市立医療センター中央市民病院が発表した偏ったケースにもとづいているので、信頼性はあまり高くない。10,000~50,000ぐらいまで幅を広げて考えたほうが良いかもしれない。が、いずれにせよ40万人死亡ということはほぼ絶対になさそうだと言える。

つまりインフルエンザよりはたちが悪いが、少なくともアジアにおいてはスペイン風邪のような絶望的なパンデミックではない。犠牲者の大多数が高齢者なのを勘案すると、たとえこの数字が最終的に50,000人になるとしても、いまの反応はいささか過剰であると思う。

なにしろ去年一年間で日本では137万6000人が死んでいて、この数はコロナ禍がなくても毎年一万人以上増えている。そこに1万から5万人程度の高齢者が加わるのを全力で阻止するために、このような自粛を続けるというのははたして合理的な行動なのだろうか? 国や県に要請されたとおりに自粛生活を続けているが、その合理性には甚だ疑問を感じるようになってきた。

より正確な予測を出すために、国や自治体が率先して、統計学的に有意な抗体保有率を調べて、できれば週次で情報更新してもらいたい。

感染症のプロの意見だけ聞いていれば良いフェーズは終わった。これから経済的な悪影響を最小限に抑えた上で、効果的に感染拡大を予防しながら、経済活動を行う上での最良の妥協点やライフスタイルの獲得がプライオリティになるはずだ。