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Z6/Z7のProRes Rawサポートっていつ出るの?

NikonがファームウェアアップデートでProRes Rawの出力に対応すると発表してからすでに一年近くが経過している。が、いまだに出でいないらしい。あまりにも早く発表してしまうのはどうなのだろうか? DLシリーズのようなヴェイパーウェアになるのではないかとちょっと心配になる。最近のニコンはフライング発表が多く、ウェブサイトでは開発発表のカウントダウンをしたりしている。

一方、BlackMagic Designは開発発表も何もなく突然BMPCC 6Kを発売した。プレスリリース直後にはすでに店に並んでいるという徹底ぶり。スティーブ・ジョブズが生きていた頃のアップルに通じるような、粋なカッコよさがこの会社にはある。

開発発表というのは自分の手の内をみせることなので、こうやって出し抜かれるリスクもある。もっとも、出し抜かれたのはニコンと言うよりも、S1Hの開発発表をしてしまっていたPanasonicかもしれないが。

Zマウントは良い点もたくさんあるし、ニコンは動画のプロ機が無いので、将来的には本体でRAWを録画可能な機種もでるかもしれない。期待はしているのだが・・・ 開発発表のカウントダウンはダサいのでやめてほしい。

BlackMagicと提携してBRAWを使えるようになったら面白いんですけどね。

翻訳は儲かりません。

翻訳の副業でかんたんに1000万円以上の年収、みたいなキャッチコピーで情報商材やセミナーを売りつけている詐欺まがいのビジネスが蔓延しているらしい。私は90年代の末から20年ほどプロの翻訳者をしている(といってもここ数年は写真や動画での稼ぎのほうがずっと多い)が、翻訳者というのはAIに取って代わられるノリッジワーカーの代表例のようなもので、これほど将来性に乏しい仕事は無いと思う。21世紀に入ってから仕事の単価も落ちる一方だ。

この怪しいビジネスを展開してる人のインタビューをちょろっと読んだ。彼は実際に翻訳業界で働いているらしい。とはいえ35歳なので、景気が良かった時期は知らないだろう。TRADOSがデファクトになる前はもっと儲かる仕事でした。本当にコンスタントに英日の産業翻訳で一千万円以上毎年稼いでいたのならば大したものだ。官公庁関連の単価が高めの仕事をすべて上流のエージェンシーからコンスタントに受けていれば必ずしも不可能ではないが、正直言って眉唾だ。仕事が正確でもの凄く速いごく一部の人だけが可能な金額だろう。

専門外なので現時点での状況はよく知らないが、特許翻訳専門であれば1000万円を超える売上は(昔は)普通だった。ちなみにフリーランスの場合は売上であって、年収は必要経費を引いたあとの金額を言うので、仮に売上が1000万円以上あっても年収1000万円とは言わない。売上が1000万円を超えると消費税の納税義務が生じるので、1000万円をちょっと超える売上というのは実は損だし、無駄に年収を上げても納税額が増えるだけでたいして豊かにならない。仕事に対する報酬で稼ぐフリーランスは時間を売っているような商売なので、大事なのは時給に換算した額です。一年間フルに働いて1000万円の人よりも、3ヶ月で500万円稼いで、あとは好きなことだけしてる人のほうが、遥かに豊かな生活をおくれます。

ちなみに彼が言うにはAIの翻訳はまだまだ使い物にならないので、あと20年は翻訳で稼げるそうだ。数年前までは私も似たようなことを考えていた。翻訳業界は沈みゆく泥舟だが、あと10年ぐらいは平気だろう、と(さすがに20年とは思わなかった)。仮にAI翻訳のブレイクスルーがあるとしても、それは英語と中国語のような需要の大きい言語のみだとうと考えていた。日本語は衰退していく一方だし、大して儲からない割には言語の特異性も強いのでもうしばらくは平気だろう、と思っていた。しかし、「みらい翻訳」を試してみて考えが変わった。すでにそこそこ英語ができる学生よりも質が高い下訳をAIが作れるようになっている。

ある意味、すでにプロレベルの技能がある翻訳者にとっては稼ぎ時とも言える。みらい翻訳を下訳のツールとして使えば、通常の2倍前後のペースで仕事をすることも不可能ではない。実際にそうやって原文で日本語8000文字程度の日英翻訳を一晩(5時間程度)で仕上げたことがある。が、それはあくまでも一時的なことで、AI翻訳ツールを使う前提で更に単価が下げられるだろう。ちなみにその詐欺サイトにはTOEIC500-600でも大丈夫、とか書いてあったが、そんなレベルの人が今から翻訳者を目指してもAIに追いつく可能性は非常に低い。この人は自己紹介で「マイクロソフトやアップル、ソニー、ポルシェなどの超大手企業」の仕事をしたことを自慢気に書いているが、プロの産業翻訳者だったら誰だってこの手の企業の仕事をしたことがあるだろう。大事なのは上流でそれらの仕事をつかまえることだ。この業界はただ他の業者に丸投げするだけの中間搾取業者が多い。下流のエージェントの仕事は最悪で、仕事に関する質問をしても元請けまで届かないし、納品物をチェックする能力も無いので、存在する意味がまったくない。

IBMのディープブルーが当時のチェスの世界チャンピオンであるガルリ・カスパロフに破れたのが1997年。それからしばらくの間は人間とAIの協業が一番強かったそうだ。が、数年ほど経つと人間が介入する余地はまったくなくなったという。翻訳の世界もそうなるだろう。しばらくの間はAIが吐き出した翻訳を納品可能なレベルに修正するのが翻訳者の仕事となる。その「しばらく」が5年を指すのか10年を指すのかはわからないが、いまから翻訳者を目指す、というのはとてもではないがおすすめできない。この仕事は近い将来になくなります。少なくとも必要たされる人間の数は大幅に減る。

この人ももはや稼げなくなることを悟って、こういう詐欺まがいのビジネスをして金を稼ぎ、投資などで増やしていくというライフスタイルを選択したのだろうな、と思います。これは翻訳に限りませんが、楽に稼げる仕事に従事している人が、その楽に稼げる仕事を休んで、それを社会に広めるための活動に従事する、なんてことは起きません。引っかかる人は根本的なところで世間を理解できていない。全盛期ほど稼げなくなったモラルが低めの人がこういう商売をやるんです。

楽に稼ぎたい、という考えは別に悪いものではない。楽に稼ぐのは悪だ。苦労して稼ぐのが真人間だ、みたいな考えが日本には根強いみたいですが、それが生産性の低さの一因になっているように思われます。しかし、楽に稼げる具体的な方法を他人からそのまま教えてもらえると思っている人は、考えを改めたほうがいい。

その方法を大多数が実行してしまったら、もはや稼げなくなってしまう、というようなことが世の中には多い。人が知らないニッチを見つけ出した人が楽に稼げるようになる。みんながそこを目指すようになったら儲からなくなるので、見つけた人は当然だれにも教えません。が、世の中にはそこそこ聡い連中がたくさんいるので、黙っていてもそのうちバレます。そのタイムラグの間に先行者としての地位を不動のものにする必要がある。行動力があれば二匹目のドジョウも狙えます。が、この手の情報商材やセミナービジネスが現れるのは500匹目以降の話なので、もはやチャンスはありません。

自分が楽に稼げる方法を思いついて、実際に結果が出ていたとして、それを他人に吹聴してまわりますか? ちょっと考えればわかると思う。楽に稼ぐことは悪いことではないし、楽に稼ぐ方法もある。が、それを餌に釣っているビジネスはほぼ全部詐欺です。逆に言えば、その手の人達が出現した段階で、そのビジネスはもう旨味がなくなっている。

今ごろ翻訳が儲かるなんて話を聞いて、信じちゃってる人たちは相当ずれてます。おそらくほとんどググらない人たちでしょうから、この記事を読むことはないでしょう。ちなみにググらない情弱の人は本質的に翻訳にはまったく向かないので、まともな翻訳者になれる可能性も低い。翻訳者にとって語学力以外で大事になるのは、専門知識と検索力と想像力です。

ちなみに私はバックパッカー時代に英語をおぼえて、ITバブルの頃に帰国して翻訳者になりました。英文和訳が儲からなくなって、産業翻訳における原文の英語の質が劇的に悪化したので、2004~2006年頃に和文英訳に転向しました。一週間に60万とか、月に200万以上稼げた時期もありましたが、基本的にこの業界は衰退する一方です。もう駄目だと見切りをつけて、当時趣味としてはまっていた写真を仕事にしましたが、写真業界も落ち目なのにすぐに気がついて、今は動画での稼ぎが主な収入源です。1971年生まれで今48歳なので、年金をもらえるようになるのは早くて70歳、下手をしたら75歳でしょうし、国民年金なので仮に貰えるようになっても生きていくのに十分な額はもらえません。2002年からずっとフリーランスなので、いまさら会社勤めは無理ですし、絶対に嫌です。会社勤めや通勤が物凄く嫌いだから今までフリーランスを続けてこれたのでしょう。このあたりを苦にしない人は、フリーでちょっと苦労したらすぐに勤め人に戻る。他の生き方ができないから、仕方なくこの生き方をしているだけ、とも言える。

正直言って、動画の世界もどうなるのかわからない。最終的にはAIが作るCGが広告用の写真や動画の大半を占めるようになるかもしれない。10年後の段階だとまだ平気だと思いますが、20年後だとわからない。いろいろと悩ましいです。が、そういうのも含めて自分次第なのがフリーランスの楽しいところだと思います。決定的に追い詰められない限りは、ゲーム感覚で楽しめます。

今の若い人は大変です。たぶんどの仕事を選んでも老人になる前にAIに取って代わられることになるでしょう。弁護士や弁理士なんかはもうすでに危険水域に入っています(なので特許翻訳も当然安くなるでしょう。すでになっているかもしれない)。30~50年というスパンで考えれば、アーティストや小説家のような仕事ですら危険。でも新しい職業が誕生する可能性もあるし、働かなくても生きていけるようになる可能性もあるので、必ずしも悲観する必要はないかもしれない。最後に残るのは場末のスナックのママみたいな仕事だって話もあるようです。

若い人へのアドバイスはとにかく金をためて投資をしろ、というところですかね。投機じゃなくて投資です。Googleは設立された98年から使っていて、Amazonも日本で利用できるようになったらすぐに使ったのに、両社とも上場時に株を買わなかった。だからこの歳になって金銭的な苦労をしているんですよね。投資して稼ぐ人間とただ仕事をして稼ぐ人間、その差は広がる一方でしょう。また、利益のために働く人間と、報酬のために働く人間の差も広がります。フリーランスと言っても二種類あって、私はずっと仕事の対価としての報酬を受け取るだけのフリーランサーでしたが、今は如何にしてパッシブインカムを増やすか、というのを主題にして活動しています。

いずれにせよ。あなたも私も資本主義社会で生きていかなければならないのです。ポスト資本主義のビジョンがあって革命家として生きるのであれば別ですが、そうでないなら(きっとそうでないでしょう)資本主義社会のルールや常識や定石を若い段階で覚えたほうが絶対に良い。ルールを覚えようとしないで将棋を指して、負けて文句を言っているような人が世の中には物凄く多い。そしてその失敗を社会や国のせいにする。ゲームするときは、まずチュートリアルをしてゲームの基本を覚えましょう。

愛国買いという愚行

「愛国買い」というのは私が勝手にそう呼んでいるだけで、正しくはなんと表現するのか知りません。つまり、同じような製品があったら日本製を選ぶ、というか日本製の製品はもうあまりないので、日本企業の製品を選ぶ、というやつです。

日本が衰え始め、中国や韓国など他のアジア諸国の台頭が目についてきた21世紀初頭、2010年ぐらいまでは、私もこの愛国買いという行為をしばしばしていました。SamsungのディスプレイではなくIiyamaを買うとか、電子レンジや洗濯機はLGじゃなくてPanasonicにするとかそんな感じです。

当時は日本企業も日本での販売価格を低めに設定してる企業が多かったので、韓国製が似たような性能で安いとはいえ、それほどコストパフォーマンスに差はありませんでした。

しかし、そうやってサポートしてもらった日本企業は日本の消費者のことを本当に考えているでしょうか? 

そのあたりにちょっと疑問を感じたしたのは2005年頃でした。当時、私はAudio TechnicaのAT4040というマイクが欲しかったのですが、アメリカでの価格と日本の価格の差がだいぶあったのです。日本企業の製品なのにアメリカでの販売価格のほうがずっと安い。生産国はどこだか知りませんが、仮に中国だったとしても日本のほうが近いから輸送コストも低そうなもんです。とはいえ個人輸入すると国内サポートを受けられるか定かではなかった上に送料が高かった。

私は悩んだ末にShureのKSM44というマイクを購入しました。AT4040よりも上の価格帯のマイクなのですが、Shureはアメリカの会社で工場はメキシコなのに日本とアメリカの販売価格差がほとんどなかった。

もちろん私が知らない裏の事情があってそういう価格設定が行われるんでしょうが、他の国のユーザーが厚遇されているとボッタクられているように感じてしまいます。

で、私がいまメインで使っているカメラはパナソニックです。図らずもむかし電子レンジや洗濯機等で愛国買いして支えてきた会社です。他の業務についてはよく知りませんが、カメラ事業に関して言えば、パナソニックほど日本のユーザーを冷遇している企業はありません。

私が使っているのはLumix S1というカメラです。これが出たときに私は予約して買いました。ぜんぜん売れなかったので予約する必要なんてなかったんですが、私的にはスペックがツボだったのでてっきり売れると勘違いして思わず予約して買ったのです。

が、日本で買った人にはまったく特典なし。SDカードすら付きませんでした。一方、アメリカでの販売価格は日本よりも若干安い上に35,000円ほどするバッテリーグリップをオマケでつけるという大盤振る舞い。これを知ったときに一瞬予約をキャンセルしようかな、とも思いましたが、何しろスペックがツボだったので我慢しました。これって要するに私達が余分に払ったお金で、アメリカ人のユーザーにバッテリーグリップを無料でプレゼントしてるのと同じことじゃないですか?

で、今度はヨーロッパです。Lumix S1で10bit 422での4K動画撮影を可能にするDMW-SFU2というアップグレードソフトウェアキーがあるのですが、日本では2万円するのに、なんとヨーロッパでは無料! 無料ですよ! またしても日本のユーザーへのこの仕打。ふざけんなパナソニック。ぜったい買わね〜、と言いたいところだけど、必要なので買いました。

発売前の商品をYouTuberなどに渡してレビューしてもらうのも最近のマーケティングのトレンドですが、パナソニックはこのあたりも徹底していて、日本人のYouTuberには渡さなかったようです。ジェットダイスケみたいに20万以上のチャンネル登録者がいる人にも渡さず、1万人以下のサブルクライバーしかいない欧米のYouTuberには渡すという徹底ぶり。もしかしてパナソニックは日本人が大嫌いなの?

私はこのカメラもキットレンズも凄く気に入っているし、パナソニックのエンジニアも大いに称賛したいところです。が、上記の理由から、マーケティングの連中にはちょっとムカついています。いくらなんでも日本のユーザーを冷遇しすぎだろ! ああ、こんな会社を愛国買いで支えていた俺、アホだな。LGの電子レンジや洗濯機を選んで節約しておけばよかった。

ちなみにCP+の対応もPが一番悪かった。こちらの専門的な質問にものらりくらりと回答になっていないような答えしかよこさないでかなりイライラした。人を並ばせといて、一部のメディアに思いっきり割り込ませるし。予約していたのでウキウキしてブースに行ったのだけど、一気にテンション下がった。ちなみに一番良かったのはリコーで、答えづらい質問にも真摯に対応してくれました。

愛国買いなんて無意味です。あなたが応援しているその企業、あなたのことなんてまったく気にしてないかもしれませんよ? 大企業はすでにグローバル企業化しているので、日本企業とか韓国企業とかそういうカテゴリーはあまり意味がありません。

一番コスパが良い製品やサービスをあなたに提供している企業があなたにとって一番良い企業なのです。

日本人の嫌な奴と韓国人のいい奴、どっちと友達になりたいですか? 要するにそういうことです。愛国買いは無意味なのでやめましょう。

S1は良いカメラなので、使い続けますけどね!